OpenID ファウンデーション・ジャパン

OIDFがOpenID for Verifiable Presentationsのセキュリティ分析結果を受領

By tshibata | 2025年08月24日

OpenID Foundationは、Digital Credentials API(DC API)上で使用されるOpenID for Verifiable Presentations(OpenID4VP)の包括的なセキュリティ分析が完了したことを発表できることを喜ばしく思います。これは、OpenID4VPDC APIを組み合わせた初めてのセキュリティ分析であり、仕様が7月に最終版となる前に潜在的なセキュリティ脆弱性を検出し、軽減することが可能となりました。

この分析は、シュトゥットガルト大学情報セキュリティ研究所の研究者によって、実績のあるWeb Infrastructure Model(WIM)手法を用いて実施されました。この手法は、OIDFプロトコルの厳密で数学的なセキュリティモデリングの実績に基づいており、研究者とOIDFワーキンググループ間の双方向のやり取りを通じて、プロトコルが期待されるセキュリティ特性を充足することを保証しています。なお、この手法はOpenID ConnectFAPI 1.0、FAPI 2.0OAuth 2.0など、他のOpenID Foundation標準の分析にも適用されてきたものです。

このアプローチはこれまで、いくつかの仕様群に影響を与えた最近の責任ある開示ように、潜在的な攻撃ベクターをプロアクティブに特定し軽減してきました。

この研究の範囲の一環として、シュトゥットガルト大学は、Digital Credentials APIと組み合わせたOpenID4VP仕様の形式モデルを提示し、関連するセキュリティ特性を特定して形式化し、それらのセキュリティ特性に対する形式的な証明を成功裏に完了しました。

これらの証明は、数学的な仮定と形式モデリングの範囲内でプロトコルのセキュリティを確認するものです。重要な点として、検証プロセス中に新たな脆弱性は特定されませんでした。

分析の範囲と目的

主な目的は、DC API上でOpenID4VPを使用することで、「クレームの偽造不可能性」という基本的なセキュリティ保証を提供できることを示すことでした。簡単に言えば、攻撃者が正当な発行者からのものであるかのように見せかけた偽のクレームを、検証者に受け入れさせることができないことを証明するという意味です。

この分析は、プロトコルレベルのセキュリティに焦点を当てたアプローチを採用しており、クロスサイトスクリプティングや暗号実装の脆弱性などの攻撃ベクターは意図的に除外されています。これらはプロトコル仕様の範囲外であり、他のセキュリティ対策によって対処するものです。

厳格な手法

WIM分析は、網羅性を担保するシステマチックな3段階のプロセスに従います。まず、研究者は仕様で明示的に禁止されていない、可能性のあるすべてのプロトコル実行をカバーする詳細な数学的モデルを作成します。このモデルは、さまざまな信頼関係を持つ任意の数の参加者を考慮し、すべての可能なやり取りのパターンで、複数のプロトコルを同時並行で何度も実行することを想定しています。

次に、仕様に記載された目標に基づいて、正確なセキュリティ特性を定式化します。最後に、これらのセキュリティ特性が可能性のあるすべてのプロトコル実行シナリオで成り立つことを示す数学的証明を提供します。

セキュリティ対策継続へのコミット

この作業は、OpenID Foundation202310月に完了した「OpenID for Verifiable Credentials」に関する最初の包括的なセキュリティ分析に続くもので、これらの重要な仕様に対する信頼性を高めることを目的としています 

以前の調査も同じくWIM手法を使用しました 

Digital Credentials Protocols ワーキンググループ (DCP WG)は、OpenID4VP+DC APIに関するこのセキュリティレポートを受け入れ、学術研究者と標準開発者の間の協力的なアプローチを継続しています。過去の分析で実証されたように、DCP WGは関連するフィードバックを現在の仕様バージョンに組み込み、実装者のための堅牢なセキュリティ基盤を確保しています。

このレポートの完全版は、実装者や広範なコミュニティによるレビューのために、DCP WGのホームページでこちらから入手できます

専門家の見解

シュトゥットガルト大学の学術研究チームは次のように述べています。

OpenID Foundationとのもう一つの実り多い協力に感謝し、影響力の高い標準の分析における今後の共同作業を楽しみにしています」

また、OpenID FoundationDCP WGの共同議長であるKristina Yasuda氏は次のように述べています。

「プロアクティブなセキュリティ分析は、潜在的なギャップが実装者やエンドユーザーに影響を与える前に特定するために重要です。学術研究者と密接に協力することで、厳密な形式モデルで仕様を検証し、プロトコルのセキュリティ保証を強化し、OpenID4VPDC APIがエコシステムが頼りにする信頼と確実性の提供を確保できます」

OAuth Security Workshopの創設者であるDaniel Fett氏は次のように述べています。「OpenID Foundationがウェブプロトコルの形式分析を標準ツールとして採用するのを見ることは素晴らしいことです。通常の専門家レビューを超えて、形式分析は隠れた脆弱性を発見し、根本的な仮定に挑戦する効果的な手段であることが繰り返し証明されています」

OpenID Foundation Chairmanの崎村 夏彦氏は、「仕様が最終版に近づく段階でセキュリティ分析を行うことを標準的な進め方として確立することは不可欠だ」と述べています。

アーカイブ