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ホワイトペーパーへの公開コメント募集:『The Unfinished Digital Estate: Culture, Law, and Technology After Death』

By tshibata | 2025年09月25日

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デジタルライフが私たちの寿命を超えて広がる現代において、多くの社会は、人々が亡くなったり判断能力を失ったりした際に、オンライン資産がどのように扱われるべきかについて、十分な準備ができていません。このたび、新たな包括的研究論文が一般公開され、コメントを募集しています:『The Unfinished Digital Estate: Culture, Law, and Technology After Death』(未邦訳)。

本稿はOpenID Foundationによって発表され、デジタル遺産管理の複雑化に対応する内容となっています。従来の金融資産にとどまらず、メールアカウント、共有写真、創作物から、私たちを超えて存在し続ける可能性のあるAI生成コンテンツに至るまで、デジタルライフ全体を網羅しています。

調査は、利害関係者からの意見を取り入れたものであり、遺産計画の専門弁護士やデジタル上の損失を経験した家族の視点も反映されています。また、異文化間での遺産管理に直面する人々にも配慮し、文化的多様性を尊重しつつ、デジタルアフターライフのための実用的な枠組みを提供する必要性を強調しています。この研究には、ドラフト版の「計画ガイド」も付属しており、こちらも一般コメントを募集しています。このガイドは実践的なツールを提供することを目的としており、専門的な法律アドバイスの代替を意図するものではありません。

この論文は、OpenID Foundationのメンバーであり、デジタルアイデンティティ標準の分野で長年貢献してきたDean H. Saxe氏、Mike Kiser氏、Heather Flanagan氏によって作成されました。特に「計画ガイド」の作成は、Death and the Digital Estate Community Group(DADE CG)による支援を受けています。DADE CGは、この論文の提言の実施を推進するとともに、デジタル遺産管理における標準の開発を提唱し続ける予定です。

政策立案者、技術者、法学者、遺産計画の専門家、デジタル権利擁護者、そしてオンライン生活を送るすべての人々に、この世界規模の問題の範囲を探求する本論文への意見をお寄せいただくよう呼びかけています。具体的には以下の通りです:

  • 拡大するデジタル遺産危機- 死亡者数の増加により、創作物、ソーシャルプロフィール、接続デバイスを含む大規模なデジタル遺産が残されているが、多くの法制度、技術プラットフォーム、文化的伝統では適切に管理できず、家族に大きな影響を与えている。
  • 文化による死生観の違い- 死に対する文化的アプローチの違いが、デジタル遺産計画の理解と実施の仕方を社会間で根本的に左右している。
  • 利害関係者とリスク- デジタル遺産計画が失敗したり不適切なままである場合に、誰がリスクにさらされ、何が失われるかを論文で特定している。
  • 既存のガバナンスの空白- 死亡、判断能力の喪失、権限委譲を管理する現在のシステムは一貫性を欠き、重要な分野で不足しており、統一的な政策解決策に抵抗している。
  • 技術ツールの限界- 利用可能なデジタル遺産管理ツールは一貫性がなく、不完全であり、主にプロプライエタリプラットフォームによって管理されている。
  • アイデンティティ委譲の複雑性- デジタル遺産計画は資産移転を超えて、アイデンティティ、権限、代理権の委譲を含み、セマンティクス、標準、脅威モデルへの慎重な注意が必要である。
  • AIとデジタル表現- 生成AIは死後のデジタル存在の新しい可能性を創造する一方で、デジタル人間性に関する根本的な問題を提起している。
  • 実装フレームワーク- 法制定者、標準化団体、実装者は、文化的多様性に配慮しながら個人の自律性を保護する拡張可能なシステムを必要としている。

本稿は、2年間にわたってIIWEICIdentiverse、その他の公開フォーラムでの広範なコミュニティ協議を経て、20254月にOpenID Foundation理事会によって委託されました。こちらは、同Foundationの標準的なホワイトペーパー開発プロセスに従っています。

皆様からのフィードバックは、この論文がデジタル遺産管理における政策開発と業界標準の強固な基盤となることを確実にすることに貢献します。特に、遺産計画の専門家、プラットフォーム運営者、プライバシー擁護者、そして死と相続に関する多様な伝統について語ることができる様々な文化的背景を持つ方々からの意見を歓迎します。

コメント期間は1024日(金)まで開かれています。
フィードバックはdirector@oidf.orgまでお送りください。テンプレートを使用し、提案する変更について具体的な行番号を参照してください。さらに、編集者は最終文書に含める価値があるデジタル遺産管理ツールやプラットフォームの紹介やリンクをいただければ幸いです。

最終的な成果と提言は、2025年から26年にかけてのDigital identity and estate planning conferencesで共有される予定であり、論文が今年後半に最終版となる前に、さらなる議論が深まることを期待しています。

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